妊娠初期からのつわり専門治療
妊娠すると8割の人が経験している「つわり」。妊娠5か月以上でも15%ほどの妊婦さんがつわりを感じています。
つわりとは、妊娠4週~16週くらいの期間にみられる吐き気や嘔吐、においや食べ物の嗜好の変化で、一般的には、妊娠することで大量に分泌される妊娠ホルモン(hCG:ヒト絨毛ゴナドトロピン)が原因とされ、当院においては、妊娠初期だけでなく妊娠9ヶ月でもつわりに苦しみ来院される患者さんも少なくありません。
また、つわりは経産婦より初産婦に多くみられ、重症化するものは経産婦に多い傾向にあります。
つわりは妊娠という喜ばしい合図かもしれませんが、ご本人にとってはこの上なく不快な症状です。
当院では、平成元年の開院当初より女性特有の症状を専門におこなっており、妊娠中、産後のケアをおこなっているため、安心してつわりの治療、健康管理が可能となります。
つわりの症状
つわりの症状は人それぞれですが、比較的多い感覚の変化として以下のようなものがあります。
苦痛に感じるようになったにおい
- ごはんの炊けるにおい
- 魚の生臭いにおい
- 洗剤のにおい
食べられなくなったもの
- コーヒー
- 白いご飯
- 揚げ物
つわりの種類
妊娠に伴っておこる症状の一つとして「つわり」があります。
つわりといっても、みなさん同じ症状ではなく、人それぞれ症状の種類も強さも違います。
ここでは、主なつわりの種類をご紹介します。
吐きつわり
「吐きつわり」は、一日中、吐き気に悩まされ、実際に吐くような典型的つわりのことです。つわりを経験した妊婦さんの7割以上がこの「吐きつわり」を経験しています。
症状が強い場合は、まったく食べ物がのどを通らず水だけでもすぐ吐いてしまうこともあります。
よだれつわり
よだれが増えてだらだらとまらないつわりです。タオルをくわえたり、ビニール袋やペットボトル、ティッシュや洗面器などに唾液を吐いて対処している人をよくみます。比較的、妊娠後期までつわりに苦しんでいる人が多いです。
においつわり
においに敏感になります。今まで大好きだったにおいが急に嫌でしょうがなくなるくらい変化します。
前述のごはんや、魚、洗剤のにおいだけでなく、湯気や香水、流しや包丁など金属のにおい、歯磨き粉、ゴミなど、普段の何気ないにおいが苦手になる人が多いです。
食べつわり
お腹がすくと吐き気がひどくなるつわりです。食べ過ぎても気持ち悪くなります。
妊娠中は赤ちゃんに糖を届けるため、おかあさんの体への糖の取り込みを抑えようと、糖代謝のホルモン「インスリン」の働きが抑制されます。
つわりは、軽症、重症、妊娠悪阻に分けられます。その中で食べ物も水も口にできず、体重が急激に減少したり、トイレの回数が極端に減ったりすることを妊娠悪阻といい、全妊婦の0.5%前後で発症します。
妊娠中の血液検査といえば、タンパクや糖などがありますが、ケトン体という成分があります。ケトン体は、脂肪が分解して出る成分のため、食事が取れなく、自分の脂肪を分解して生きるためのエネルギーに変換している時の合図です。ケトン体が検出された際は、妊娠悪阻と判断されます。
妊娠悪阻の重篤な合併症としてビタミンB1の欠乏から発症するウエルニッケ脳症があり、意識障害や小脳性運動失調などが出現し、50%以上で記憶障害が主症状のコルサコフ症候群という後遺症が残ることも。胎児の発育だけでなくお母さんが亡くなってしまう症例もあるため、慎重に管理する必要があります。
東洋医学からみるつわり
1.妊娠によって体におこる変化
つわりは、東洋医学では妊娠によって月経が止まり、経血が排出しなくなることで衝脈という経絡の流れが逆流することで胃の気が逆流し、「つわり」という症状を引き起こすとされています。
2.体質別のつわり
陰体質のつわり
陰体質のつわりとは、ずっとダラダラ気持ち悪さが続く、あまり嘔吐することなくムカムカ・スッキリしない状態です。
進行すると陰が弱り「陰虚」の状態になります。この状態になると、まったく食事も水分も摂取できず脱水になりやすく、入院することもあります。
出産直前まで苦しむつわりのタイプです。
陽体質のつわり
陽体質の女性では、妊娠初期からつわりが強く、14~15週くらいで落ち着きます。
しかし、落ち着くまでは吐き気、嘔吐が強く出やすい傾向にあり、つわりが落ち着けば症状が出なくなります。陽とは火と同じで、一気に燃え上がり、すぐ鎮火するといったイメージです。陽の体質は、陽虚になる前につわりが治まります。
3.病状別つわりの種類
つわりの種類をわけるとすると、大きく3つに分けられるとされています。
- 脾胃虚弱によるつわり
- 胃不和によるつわり
- 痰湿によるつわり
東洋医学的には上記のように分類されます。人間は、生まれてからは、呼吸と食事でしか生命を維持することができません。そのこともあり、水分と栄養を消化吸収している胃のはたらきを正常な状態にしなければつわりは治りません。
つわりの注意点
つわりは、妊婦さんならだれもが経験するといっていいほど一般的な症状ですが、人それぞれ症状も、つらさも違います。
時が過ぎれば楽になると我慢していると、それだけでストレスになる場合もありますし、栄養失調、脱水症状を引き起こし入院しなければならないケースも少なくありません。
赤ちゃんにしっかりと栄養を与え、健康に育ってもらうためにもつわりの治療が必要となります。
※妊娠中に風邪や帯状疱疹、難聴など病気にかかってしまうこともあり、薬が使えない状態にも鍼灸治療で対処することができます。
つわりかな?と感じたら、鍼灸治療で安心して出産を迎える準備をしましょう。
つわりに対する鍼灸治療
つわりに対する鍼灸治療は、症状の程度や種類、時期によって異なります。
症状が強い場合には、本質的な治療も必要ですが、まずは強い吐き気、唾液を抑えるための対症療法も同時におこないます。
つわりの治療でよく使うツボには、足三里や内関、中かん、胃の六つ灸、身柱などがあります。
足三里
足三里は、足の陽明胃経という胃に関係するツボで、奥の細道で有名な松尾芭蕉も足三里にお灸をして長旅を乗り切ったと記すほど胃を健康に、丈夫にするツボです。もともと安産のツボとしてもよく使用しているツボです。とにかく胃の働きを正常な状態に戻すために必要なツボとなります。
内関
内関は、ストレスが強くかかっている時、精神的に不安になっている時、また乗り物酔いや、人前に出る場面で緊張を解くために使用するツボで、つわりの症状による精神的なストレスだけでなく、息苦しさや頭痛、肩こり、口の苦さなどを和らげてくれます。