繰り返す頭痛・ひどい頭痛専門外来
頭痛の原因は様々です。特に病気があるわけではないのに繰り返し起こる頭痛は、一次性頭痛と呼ばれ、首や頭部周辺の筋肉の緊張、血管の拡張によって起こると考えられています。
近年では、コロナ禍の影響を受け、環境が変化したことで頭痛患者さんは急増しています。
この頭痛に対して、日本頭痛学会では、治療のガイドラインとして、鍼灸治療をあげています。特に、片頭痛に対しては非薬物療法として鍼灸治療の推奨度をAに位置づけています。
もともと、一次性頭痛の原因である筋肉や血管の状態は鍼灸治療が最も適した治療法であり、近年の自律神経が乱れやすい、また女性ホルモンのバランスが乱れやすい生活環境を考えると、鍼灸治療を第一選択とし、治療だけでなく、再発防止のための予防治療にも活用していくことが望ましいです。
今日から頭痛と頭痛薬から開放されましょう。
頭痛の種類
頭痛の原因は様々ですが、明確な原因疾患がなく繰り返し起こる頭痛(=一次性頭痛)と、病気が原因であらわれる頭痛(=二次性頭痛)に大別できます。
代表的な一次性頭痛は、緊張型頭痛、片頭痛、群発頭痛の3つです。 緊張型頭痛と片頭痛は混在する人もいます。
1.緊張型頭痛
頭痛全般的に最も多いのが一次性頭痛に分類される緊張型頭痛です。年齢や性別を問わず、誰もが発症する可能性のある頭痛と言えます。
精神的なストレスや長時間のデスクワーク、スマホの使い過ぎなど同じ姿勢を続けることによって、血行が悪くなり首や頭の筋肉が緊張してしまうことで頭痛が起こります。緊張型頭痛に関係する筋肉は、首や頭から肩、背中にかけて走行しているため、肩や首のこりを伴う人が多いです。
後頭部を中心に頭全体が締め付けられるような重苦しい痛みです。範囲が広くなると、目も開けられなくなるまで痛みます。
2.片頭痛
片頭痛は、20代から40代の女性に特に多くみられ、緊張型頭痛の次に多い頭痛です。
片頭痛の原因は、頭蓋骨内の血管が広がり炎症を起こすためと考えられています。
ストレスや疲労の他、女性に多いことから、女性ホルモンが何らかの形で関わっていると見られています。
片頭痛の症状は、ズキズキと脈打つような強い痛みで、光や音に敏感になったり吐き気などを伴います。
また、頭や体を動かすと、頭痛を誘発する傾向があります。
頭痛の前兆として、チカチカとした光が見えることもあります。
一般的な頭痛薬が全く効かない場合は片頭痛の可能性が高いとも言えます。
3.混合型頭痛
筋肉が収縮することでおこる緊張型頭痛と、血管が拡張することでおこる片頭痛が混在するケースです。
どちらの症状が強いのか、また頻繁におこるのか確認しながら適切な治療が必要になります。
4.群発頭痛
群発頭痛を発症する患者さんは比較的少ない傾向にありますが、どちらかというと男性に多くあらわれます。
群発頭痛の原因は、目の後ろを通っている内頚動脈が拡張して炎症が起きるためではないかと考えられています。
この炎症が起きる原因はわかっていませんが、体内時計が関係しているとも言われています。
群発頭痛の症状は、原因となる内頚動脈が目のところにも分布しているため、「目をえぐられるような」激しい痛みで、一度、症状が出始めると、1~2カ月間、毎日のように同じ時間に頭痛が表れるようになります。
5.二次性頭痛
二次性頭痛の原因は、クモ膜下出血や脳腫瘍など、重篤かつ、緊急の処置を必要とするケースが多いため、早期の診断と対処が必要です。
経験したことのない強い頭痛が突然あらわれたり、手足の麻痺やしびれ・痙攣や、激しい嘔吐、高熱などを伴う頭痛が起きた時はすぐに救急車を呼ぶなどしなければなりません。
また、帯状疱疹など、ウイルス感染による頭痛の場合も注意が必要となります。
頭痛の原因となる組織
頭痛Level 1 -皮膚・皮下組織-
一次性頭痛のはじまりは、頭皮や首にある皮膚、皮下組織の緊張、冷え、乾燥から起こります。
皮膚、皮下組織が縮んで硬くなることで、その奥にある筋膜、筋肉を圧迫し、筋肉の血流を滞らせて痛みの原因となります。
頭痛Level 2 -表層の筋肉-
1.後頭前頭筋
後頭前頭筋は、頭を覆っている筋肉の総称で、筋肉の一方が皮膚で終わっている皮筋です。
また、後頭筋、前頭筋の2つの筋肉によって構成されています。
後頭筋は、後頭部にあり、外側は耳の後ろにある突起物乳様突起についています。
前頭筋はおでこにある筋肉で、眼輪筋、鼻根筋と線維を交叉させ、眉間と眉部の皮膚に停止します。眉を引き上げおでこにシワを作る役目をしています。
2.側頭筋
側頭筋は、側頭部全体に広がっています。
そして、頬骨の内側をくぐるようなかたちであごの骨についています。
食べ物を噛むときに使う筋肉でもあるので、歯ごたえのあるものを食べ過ぎたり、ストレスから噛みしめや歯ぎしりの癖がある人は緊張しやすい筋肉でもあり頭痛の原因になります。
3.僧帽筋
僧帽筋は、首の付け根、外後頭隆起という場所から、一番下のアバラ骨がついている背骨、第12胸椎まで続いて始まり、その停止部は肩甲骨や鎖骨の外側1/3になる筋肉です。
頭が少し重たい感じがする、首の付け根が重たい、痛いなどの軽い症状はこの筋肉がこっていることが多いです。
4.胸鎖乳突筋
胸鎖乳突筋は、名前のとおり、胸骨と鎖骨という前側にある骨から始まり、乳様突起という耳の後ろにある頭蓋骨の一部についています。
首を曲げたり、捻ったりするときに作用する筋肉で、頭痛の原因になりやすいところです。
不眠症など寝つきが悪い、眠れない症状や、耳鳴り、めまいがあらわれる頭痛の時に関係します。
頭痛Level 3 -中層の筋肉-
1.頭板状筋
頭板状筋は、首の骨の、第4、5、6、7頚椎、及びあばら骨がある胸の骨、第1、2、3胸椎の後ろに飛び出た部分(棘突起)から始まり、耳の後ろにある下に飛び出た部分、乳様突起と呼ばれるところを含む頭蓋骨についています。
そして、頚板状筋とともに上を向く動作、いわゆる首を後ろに反らしたり、真横に倒したり、左右に捻る運動をしてくれます。
2.頚板状筋
頚板状筋は、あばら骨がある胸の骨、第3、4、5、6胸椎の後ろに飛び出た部分(棘突起)から始まり、首の骨の、第1、2、3頚椎の横に出っ張っている横突起と呼ばれる骨についています。
そして、頭板状筋とともに上を向く動作、いわゆる首を後ろに反らしたり、真横に倒したり、左右に捻る運動をしてくれます。
3.頭半棘筋
頭半棘筋は、首の骨の、第4、5、6、頚椎の関節突起、及びあばら骨がある胸の骨、第1~6胸椎横に出っ張っている横突起と呼ばれる骨からはじまり、後頭部の頭蓋骨についています。
そして、上を向く動作、いわゆる首を後ろに反らしたり、左右に捻る運動をしてくれます。
頭痛Level 4 -深層の筋肉(後頭下筋群)-
後頭下筋群とは、頭の後頭骨から首の骨(頚椎)に、付いている筋肉で最も深い所にある筋肉で、小後頭直筋、大後頭直筋、上頭斜筋、下頭斜筋の4つの筋肉から構成されています。
後頭下筋群が緊張してくると、この筋肉の奥にある後頭下神経、大後頭神経、小後頭神経が圧迫され頭痛や頭重感、首の重い痛みなどが出てきます。 特に、リウマチの方や交通事故でのむちうちを経験している方は症状が強く出やすい場所です。
- 小後頭直筋
- 大後頭直筋
- 上頭斜筋
- 下頭斜筋
頭痛治療の流れ
-
01 問診
当院では、まず患者さんから頭痛や体の気になる症状、どんな時に気になるのか、頭痛が悪化するのか内容をうかがって、症状の原因を突き止めます。頭痛を引き起こす原因には、
・首こり
・肩こり
・むちうちの後遺症
・貧血
・うつ病
・低血圧
・生理不順・帯状疱疹
・虫歯の治療
・睡眠不足
・起立性調節障害
・自律神経失調症
・脳梗塞
・クモ膜下出血など様々あるため、問診によって原因を明確に推測する必要があります。その後、治療内容と今後の方針を極力わかりやすく説明させていただき、患者さんにご納得いただいてから治療に入ります。
また、女性はどの年代においても女性ホルモンの関係、女性ならではの症状としてあらわれます。そのため、どんな症状でも、女性ホルモンとの因果関係があるのか確認する「問診」をとても大切に考えています。男性の場合は、職業や職場での立場など環境の影響が深く関わるので、女性同様に問診には細心の注意をはらいます。
-
02 検査
問診後は、実際にどのような状態なのか、頭痛の原因が何なのか確認するための検査をします。くも膜下出血等の重篤な要因があるかどうか把握しなければならないからです。
症状によっては、すぐ病院に行き処置をしなければならない病気が潜んでいることもありますので、治療前の大事な作業です。検査項目は、西洋医学的な検査に加え、東洋医学的な診断もおこないますので、脈をみたり、お腹の状態を確認したりすることもあります。脈を診ることで、自律神経の変化や生理周期の変化も読み取ることができるため確認します。
単純に、デスクワークやスマホの使い過ぎによる頭痛、日本女性特有の「なで肩」からおこる頭痛なら、治療と同時に姿勢を気を付けるだけでも楽になってきます。
-
03 鍼灸治療
問診と検査等の後は、ベッドに横になってリラックスしていただいた状態で頭痛の治療を開始します。
(上の写真は、わかりやすくするため座っています。)患者さんの体は冷えているのか、硬く緊張しているのか、逆に軟弱になっているのか、一部の組織が炎症反応を起こしているのか、患者さんの主な訴えと関連する部分はあるのかなど把握したうえで状態に合わせたツボに鍼灸治療をおこないます。
鍼は髪の毛と同じくらいの太さ0.1mmほど、お灸は、火が直接肌に触れないものを使用していますので、火傷やお灸の痕が残る心配を極力減らします。
お灸にはリラックス効果だけでなく、血行の促進や抵抗力を高めて体を強くしてくれるといった様々な作用があります。また、鍼治療の後にお灸をすることで、治療効果が持続する作用もあります。
-
04 電気光線療法
患者さんの症状によっては、鍼や灸に加えて、より血行を促すため、運動不足を解消するために電気治療を併用する場合があります。電気治療というと「ビリビリ」という痛いイメージが先行しがちですが、実際には眠ってしまうような心地の良いごく微弱な電流を流す程度です。
この治療は体の表面にある皮膚や筋膜、筋肉を刺激して血行を促すものですので、妊娠中の方などでも問題なく受けていただけます。
命に関わる二次性頭痛は早期発見が重要
慢性的な頭痛がある方は、くも膜下出血などによって起こった頭痛を「いつもの頭痛」と勘違いして受診が遅れるケースが少なくありません。こうした深刻な病気による頭痛があった場合、できるだけ早く脳神経外科の受診が必要です。特に、いつもと違う激しい頭痛や吐き気、いつもより症状が治まらないなどある場合にはできるだけ早く受診してください。
鍼灸治療は再発防止に長けている
鍼灸治療の長所の一つは再発防止です。二次性頭痛の場合、原因疾患であるくも膜下出血の再発防止です。発病には、殆どの場合、仕事を含め普段の生活習慣が原因で、成るべくして発病します。そのため、普段から鍼灸治療で体全体の手入れをすることで、クモ膜下出血も二次性頭痛も予防することができます。
一次性頭痛の場合、薬よりも早く良く効きます
鍼灸治療の長所は即時効果もあらわれやすいことにあります。慢性的な頭痛ほど、鍼灸治療の効果を実感するまで時間がかかったり、効果が出ても長続きしない場合もありますが、頭痛薬よりも確実に早く楽になり、再発しにくくなります。
つらい頭痛から開放されましょう
慢性的な頭痛は、専門的な治療を受けることでコントロール可能ですが、一般的に総合病院などの内科、脳神経外科では、混雑ゆえに、生命に直結しないような頭痛の管理まで手が回らないことも多く、対症療法での治療となってしまいます。その反面、鍼灸治療では、前述の特性から、適切な治療を続けることで、確実に症状を改善させ、穏やかで快適な日常を取り戻すことにつながります。まずは、頭痛を薬でコントロールするという呪縛から開放されましょう。